ミライマ

-2010.10.14-

「杉本家」見学会

杉本家住宅とは

杉本家住宅は京都の烏丸四条下ルに寛保3年(1743)、「奈良屋」の屋号をもって呉服商として創業され明和4年(1767)に現在の場所に移りました。

現在の杉本家住宅の主屋は元治の大火後に再建され、明治3年(1870)に上棟され主屋は表通りに面する店舗部と裏の居住部を取合部でつなぐ表屋造りの形式を示しています。京格子に出格子、大戸、犬矢来、厨子二階に開けた虫籠窓。杉本家住宅は昔ながらの典型的な京町家の佇まいで町家としては市内最大規模に属し保存状態は良好で平成22年に重要文化財に指定されました。現在も杉本家住宅は家族の住む家として使われています。

今回の杉本家住宅の見学会は、秋の一般公開「ふだんの町家-日常使いの道具たち-」展でした。昔から続く町屋の伝統的な住まい方やしつらえ、普段の暮らしの工夫を五感で感じてもらえたのではないかと思います。

フォルマが感じたこと

室内の暗さと外部の明るさの対比

前回の聴竹居の時もそうでしたが、この手の感覚に美しさを感じます。庭を印象的に見せるため、空間の広がりを演出するためです。内部の壁(黒)と影を同化させ壁の存在を無くす事で境界が認識されなくなり影の闇の部分が無限に広がっているような錯覚が得られます。
以前、吉岡徳仁氏(デザイナー)のインスタレーションで同じような感覚を体験した事があります。壁を凝視していると意識が吸い込まれて宙に浮くような不思議な感覚でした。こういう身体感覚に働きかける仕掛けは設計にも取り入れたいと思います。

障子を通して景色を見る

「障子を通して景色を見る」杉本歌子氏のこの言葉に優美で詩的な風景が想起されました。障子は開け閉めするもので、普通閉まった状態では庭は見えません。しかし少し注意を払うと初夏の新緑、秋の紅葉、冬の降雪の様子を障子を通して見ることができます。障子を通して映し出された光と陰の模様の中に庭を見ること(感じること)が出来るのです。

慌しい毎日を過ごす中でこのような体験をすると、この空間に流れるゆったりとした時間に落ち着き、癒され、時間を忘れるような感覚になりました。

見学を終えて

杉本家住宅が創られた当初の姿から140年を経た現在では取巻く周辺環境や状況は激変しています。にも関わらず、杉本家住宅では昔ながらの暮らしが現在まで続いています。そこには日本人の美しくて豊かな生活があるように思いました。合理的なものの考え方や暮らしの中で、置き去られ忘れ去られた習慣、物や事。現在の住まい方に色々な気付きをもたらしてくれた見学会となりました。

重要文化財 杉本家住宅のホームページ
http://www.sugimotoke.or.jp/
※見学の予約はホームページより可能です。