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-2011.8.1-
狭小住宅へのこだわり
狭小住宅を設計するにあたり、FORMAが設計事務所としてこだわっているポイントや実例に沿った設計手順などを簡単にご紹介します。
これらの点を踏まえれば、狭小住宅は非常に高いポテンシャルの家になるとFORMAは考えています。
■狭小住宅設計の前に考えること
まず最初に(これが最も重要なことなのですが)クライアントの狭さに対する空間認識と、設計を行う側の空間認識の整合を図る事です。つまり、クライアントと設計事務所が「同じモノサシを持つ事」が大切です。
FORMAでは、近い規模の事例を実際体感して頂き、クライアントに狭小住宅の空間を肌で感じてもらうようにしています。
狭小住宅は2次元(幅、奥行)だけでなく3次元(高さ)方向にも通常の寸法とは違った体系を使いますので、ここを理解してもらわないと発想が制約を受けてしまう事になります。
第二に、クライアントが必要とする収納の量・家具・備品などを設計事務所が詳細に知ることです。
少しでも広くという事で収納面積にしわ寄せが行くことが多いので、建物が建ってから「収納場所が無い!」とならない為にも、狭小住宅という事で、ある程度クライアントにも「不要なものを思い切って整理整頓してもらう」などして協力を仰ぎながら、必要最小限の収納量の具体的なイメージを持っていただきます。(この収納量の具体的なイメージに沿って、生活をシュミレーションしてもらう事も今後の計画の中で有効となります。)
第三に生活習慣に関するヒアリングが欠かせません。
寝食、娯楽、寛ぎなどの場面を今までの生活でどのようにされているか、また、その習慣や様式が絶対必要なものかある程度融通が利くのか、また加齢に伴いバリア(段差などの障害)があってもいいのか、
という視点も狭小住宅の設計には欠かせません。
上述した項目で、設計事務所はクライアントに対して、何かしらの生活習慣の変更をお願いしなければならないケースも発生するかもしれませんが、事前に打ち合わせの中でしっかりと双方が納得のいくまで検討を重ねていくことが重要です。
■狭小住宅設計の際に考える事
狭小住宅の問題点として、書いて字のごとく「狭く感じる」「収納量が不足がち」「暗そう」「豊かさが感じられない」などがあります。
一方、良い点としては「必要最低限の空間に効率よく暮らす事により、建設コストを抑えられ、消費エネルギーの低減、各種税金もミニマム化、家族の距離感が親密になる」などの効果が有ります。
良い点は残し問題点を解決できれば、狭小住宅は住まわれるクライアントにとって将来的にも非常に高いポテンシャルの家とすることができます。
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■FORMAでの狭小住宅の具体的な設計手順
最後に、FORMAでは狭小住宅の問題点の解決について上記を踏まえた事例がありますので、少し具体的な設計手順も紹介したいと思います。
1.建物のボリュームの確保
敷地面積、法規制(容積率、斜線制限等)、景観法やレアなケースだと、がけ地条例などにより計画出来る建物のボリュームが決まってきます。
狭小住宅の場合は少しでも多くのボリュームを確保したいので、法規制そのままで計画すると少ないボリュームになりがちです。
法律の除外規定や緩和規定を駆使し、条例などの場合は関係各課内の取り扱い基準が有ったりするので事前調査や適宜協議を行い有利になる方法を模索しながら設計する事で少しでも多くのボリュームを確保します。
2.空間の割り当て
可能な限り多くの建物ボリュームを確保したうえで、床下収納や天井裏収納で面積除外出来る部分を確保し、実際の暮らしの中で必要な部分を割り当てていきます。
ポイントとしては、機能を特定する部屋ではなく多用途で使えるスペースとして設計するように心がけます。
多様で使えるスペースとすることにより、様々な機能やアクティビティーに対応できる、より自由度の高い生活が実現出来ます。
狭小住宅の設計で重要なポイントはもうひとつ、狭く感じないように視線の抜けを創り出す事です。
その手がかりとしては敷地の景色の良いところに対して抜けの軸線を取る、風の流れに沿った方向に抜くというのが常套手段です。
3.スキップフロアー、吹き抜け構造
床下利用等を考えると自然とスキップフロアーの設計となりますが、収納の高さと抜けに対する関係性でスキップする高さを設定すると、矛盾のない住みやすい設計となります。
容積率を目いっぱい使う場合で「フロア面積 > 容積参入面積」の関係になる場合は、吹き抜けを取る事になります。吹き抜け構造は上下方向の抜けに通じます。
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上述した内容を効果的に組み合わせて計画していくと狭いながらも濃密な空間となります。
もちろん敷地状況、周辺環境、社会的な要求も重要な要素となります。
更にクライアントの思いを反映しながら愛着を感じてもらえる家になるよう思いを込めて設計していきます。