住まい方アドバイザー 中西千恵のブログ

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-2023.10.27-

陸前高田市

東日本大震災の被災地へいつか行かなくてはと思っていました。そこで感じたことを残します。

2023年10月5日(木)、陸前高田市の高田松原津波復興記念公園を訪れました。

今まで感じたことのない大きな大地のゆれ、当時京都にいても「想像できない何かがおきている」そんな恐れを感じたことは過去の記憶ではなくまだ鮮明な記憶としてあって、いつか震災の現場に行かなくてはならないと思っていました。

12年前の記憶を思い出しながら陸前高田市へ入りました。道の駅「高田松原」へ行くと、横長の水平ラインが印象的な低い建物が目に入り、ざわついていた気持ちがしずまる、そう感じました。

そして、建物の手前からまっすぐ海へ向かう軸線に立ったとき、そこに自然と祈りがあらわれ無意識に手をあわせていました。

建物の中央真下には、水盤と真上にトップライト。水は津波を想起させ、光により未来に向けた復興を感じさせる、東日本大震災の追悼と祈念のため、来場者の気持ちを静める場を意味しているそうです。

周囲の整備された景色を見ながら海を望む場へ向けて一歩一歩すすむ道は、私にとっては想像でしかない津波や震災をこの地で感じる時間でした。

静かでおだやかな湾、植樹された多くの松の木、後方には奇跡の一本松と震災遺構のユースホステル、なんの役にもたたない涙が頬を伝いました。それと同時に、ここで失われた命は、失われたのではなく未来へつながっている、そう感じました。

ここの背景を知りながら訪れたこと、そしてそこにある建築が、より震災を思う気持ちの輪郭をハッキリとさせてくれたように思います。言葉にならない、身体と心で感じたことが深く自分に刻まれるような、なんとも言えない感覚です。

海を望む場からの帰り道、雨が降ってきました。雨はしばらくするとやみ、北の空に大きく鮮明な虹が見えました。そこにいる人たちが同じ方を見つめ虹を眺めました。それぞれになにを想ったのでしょう。雨で流されたあとの虹の光景は私たちを清々しい気持ちにさせてくれ、今ここにこうして存在していることへの感謝を思いました。

そのあと、そこからほど近い同じく陸前高田市の、みんなの家、交流施設ほんまるの家、みんなの縁側を訪れました。震災後の建築めぐり。それぞれ建築家がここでの建築はどうあるといいのかを考えて設計されたものだと思いますが、そこでなにを感じ、なにを思うのか、自分の内側に意識を向ける場所のような気がします。

応対してくださった人の笑顔、震災後、建築されたり移築された建物の木のぬくもり、温かくやさしく、訪れた側が逆に救われているようにも感じました。そして、ここでもきれいな二重の虹を見ることになりました。

12年前の震災のほんの一部にふれただけですが、忘れることなく心に刻まれたように思います。訪れることができてよかったです。