-2014.8.19-
「ヨドコウ迎賓館」見学会
ヨドコウ迎賓館とは
兵庫県芦屋市山手にあるフランク・ロイド・ライト設計の住宅です。灘の酒造家・山邑太左衛門の別邸として計画されました。後に淀川製鋼所の所有となり、国の重要文化財の指定を受けています。
1918年に基本設計終了、1923年着工、1924年に竣工となっています。世界における時代背景としては、ロシア構成主義(1915)、デ・ステイル(1917)、第一次世界大戦終結(1918)、バウハウス開校(1919)、CIAM(1928)、グロピウス、コルビジェ、ミース達がモダニズム建築の理念を確立させ、各国に急速に浸透していった時代でした。
日本では、以前見学した「旧絹巻邸」の設計者である本野精吾の自邸が1924年同年に竣工となっています。 ヨドコウ迎賓館の他に「自由学園明日館(1921)」「明治村の旧帝国ホテル玄関ホール(再現)」でライト建築が見られます。同時期の建築事例としては、「バーンズドール邸(ホリーホックハウス)(1917)」「ミラード邸(1923)」などがあります。
バーンズドール邸(ホリーホックハウス)、ミラード邸は、所謂ユーソニアンハウス期の建築です。石の文様はマヤ文明の遺跡をモチーフにしたような彫刻が刻まれています。水平基調のシンメトリーなつくり、高低差のある敷地に合わせた断面計画、自然とのつながりを意識した設計はやはり共通しています。
フォルマが感じたこと
小さな空間と大きな空間の差を利用したシークエンス
そのまま階段を上り応接室へ。ここの入口巾も700mm切れる位です。そして応接へ入ると天井高く広々としている、玄関や入口との対比を狙った空間構成と感じます。 斜面地に建っていることも有り、床もスキップさせて他の空間につながっており、山の斜面を意識させられました。これらは、ライトが好んで使っていたシークエンスのようです。
意匠の作りこみに対する熱意
飾りだなの意匠。 一部は可動式、なぜか板の厚みを変えてある部分が有りましたが、こちらは何故だか不明。 通風のための小窓。 全ては小さなドアのような意匠となっています。眺めの窓はFIX。通風は小さな小窓の開き。用途別に取るというお手本でもあります モチーフの銅製のプレート。 これが和室の欄間や、火灯窓風、襖の引き手にも引用されている。(和室は弟子であった、遠藤新氏の設計と言われています)。心遣いでお腹一杯になるくらいの勢いを感じます。 最上階のダイニング天井はこれぞライトの意匠と感じるものでした。
見学を終えて
今年(2014年)で竣工から90年経つ建物です。現在は深い山の緑に抱かれていますが、竣工当初は六甲山のごつごつした岩山だったとの事です。 環境が変わっても建物は変わる事無く有り続けます。時の流れに対しても整然と建ち、設計者や施工者の思いが詰め込まれた建築。それ故、後世の私たちもその思いを受け取る事が出来、たくさんの方に愛される建築となるのだと感じます。
今回は陶芸家ご夫妻2組、ウェブデザイナー氏、FORMA2名の合計7名での建築見学会でした。見学時は、平日の午前中ということで7名貸切見学でした。 おかげで、ゆっくり気の済むまで堪能。
ダイニングの椅子に腰掛けながらおしゃべりしたり、屋上のテラスに出て六甲山からの風に吹かれたり、和室に正座してみたり、それぞれが思い思いの過ごし方で建物を感じるいい時間が流れました。皆さん「非常によかった。」という感想です。
見学後は、近くのレストランで食事をいただきながら、建築や暮らしやラフなお話しをしながらの楽しいひとときでした。 FORMAの建築見学、不定期ですが今回も好評でした。
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ヨドコウ迎賓館のホームページ
http://www.yodoko.co.jp/geihinkan/
※見学の予約はホームページより可能です。